「ねえ、ウラ」
「なんだい?」
目に力を入れて、小さく息を吸い込む。この季節特有の、冷たくて澄んだ空気が、ちくちくと私の体を刺すようだ。
いたい。
「ウラが、消えるって、きいた」
「な、」
「消えちゃうかもしれないって、きいた」
普段よりも相当低くなった私の声が空気を震わせる。小さく、低く。出来る限り押し込めて。
そうでもないと、きっと、溢れ出てしまいそうだった。
くるしい。
「ねえ、嘘でしょう?」
「・・・」
「うそ、だよね?」
いつも余裕綽々、といった様子で緩くカーブを描いている口元はきゅ、と締められていた。
そんな彼の様子と、困ったように呼ばれた名前、そして表情が全てを物語っている。
なきそう。
「どうして嘘だよ、って言ってくれないの?」
「・・・・・・」
「それが嘘でもいいから、お願い・・・」
もう、力を入れたところでどうにもならないくらいの量の涙が溢れ出てきた。
お菓子を買ってもらえない子供のように、ただひたすらにぼろぼろと涙を落としながらいやだ、いやだとばかり繰り返す。
みとめない、みとめたくない。
「ごめんね、」
「ウラは・・・ウラは、ほんとうに、うそつきだね」
「そうだよ・・・僕はうそつ、」
「うそ」
「・・・?」
「ウラは嘘吐きだよ。自分はうそつきだ、って嘘をついてるの」
ウラのばか。小さく、ちいさく、でもきっと聞こえるであろうぐらいの大きさで呟く。
彼と私は存在しているところが違いすぎるのだと気付いてしまったのはいつの事だったか。
だから、だからこそ嘘に嘘を重ねて、嘘に溺れて、嘘にまみれて、全てがうそで嘘がすべてで、
真実の反対が嘘ならば全てが嘘の世界では嘘が真実で真実が嘘で。
はじめからおわりまで、なにもかもが虚構に塗り固められたものだとしても、幸せをみていたかったのだ。
だいすき。
零
れ
往
く
色