、」


ふわりと甘くとろけるような声色で名前を呼ばれた。 そして、振り返る間もなくまわされる腕。背中側からまわされた白くしなやかな腕はわたしの鎖骨あたりで緩く交差した。


「…なぁに?」
「…。いや、なんでもあらへん」
「そう?」


変なの。思った一言を口の中で転がしながら、背後に向かって体重をかける。


「ゆうし」
「ん?」
「なんでも、ないっ」


寄りかかったまま、上を向いて名前を呼んだ。 一方の侑士はわたしの為に頭を垂れて返事をしてくれたもんだから、今じゃお互いの息がかかりそうなくらい顔が近い。


「…、ふふっ」


そのままじゃれあいながらついばむ様なキスを何度か繰り返した。 目を閉じると外からの陽射しに指を絡ませ、じんわりと暖かな感触を感じる。

窓の外にいる小鳥の騒がしい声が、やけに近くに感じた。



明日を舞い上げて