「…好きなら、何をしてもいいって言うんですか?」
「えぇ、そうです」
「そう…なら、」


アリスの事を思い出していたのだろう、幸せそうな笑みを浮かべるペーターまで一気に距離を詰める。 少し、少しだけ背伸びをして頬に口付けた。


「これも許されるんですよね?」
「…なにするんですか」


袖で思いっ切り拭いながら睨まれる。3秒後には死体になってるかなぁ。でもやってしまった事は仕方がない。 へらりと笑って「ちゅーです」と答えた。
流石に視線が痛くて視線を右にずらす。と、金色の長髪、爽やかな青のエプロンドレスが一瞬視界を横切った。


「だいたい貴方はなに考えてるんですか、雑菌がうつ、」
「じゃあアリスに消毒してもらったらどうです?」


くすくす。わざとらしく声を立てて笑うと、ペーターの眉間に皺が寄った。まあ当然か。 ひとしきり笑ってから至極にこやかに口を開いた。


「私は貴方が好きですよ?」


くすり。悪戯っぽく囁いたら直ぐさま踵を反した。わかりきった返事なんていらない、だから急いで逃げ出した。 完全な拒絶を受ける勇気はないから。だから。

私がこの世界から持ち帰るのはこの想いだけでいい、彼はたとえそれが嫌悪だとしても私を覚えていてくれれば尚いい。


私ってこんな性格だったかなあ。この世界に来てから歪んだのかもしれない、自嘲気味に笑って城を後にした。



暗闇が照らす