「夏目さん、好きです」
「うん、僕ものこと好きだよ」
ふわりと微笑みながら迷うことなく返事をした彼を見て、無性に泣きたくなった。この人が好きなのは人間も妖もどちらもなんだ。
とっても優しいひと。私が愛していると伝えればきっとこの人は困った顔をしながら最善の、
一番私を傷付けないであろう台詞を探すのだろう。
私が妖だから、…だから、報われないのだ。自分の立場を弁えるんだ。
そう思って諦めようとしたのに事実を突き付けられて耐え切れなくなった。この人はみんなが好きで、誰も好きにならないんだ。
誰かを傷付けるのが怖いのだろう。自分が苦労するのは厭わないが他人を巻き込むのは自身が許せない。
…貴方のその選択で傷付けく者も大勢居るんでしょうに。
夏目のそんなところを好きになったのは紛れも無く私自身で、その私は夏目のそんなところがだいきらい。
でも夏目はすき。だけど夏目という人間は、…。
ぐるぐるぐる、いい年して、それこそ夏目の何倍、何十倍も生きているのに人間の女子の如く悩むとは。呆れて微かに吐息を漏らす。
心配した夏目が声を掛けてくれたけれど臆病者の私は、何も言うことは出来なかった。
なまえをよんで
「名前、呼んでください」
「…え?あぁ、分かったよ、」
「はい。…たくさん、呼んでくださいね」
「うん、助かるよ」
「(この人は鈍いのか確信犯なのか、)」