「武…ざぶい」
寒い。カレンダーのうえではまだ秋の分類の筈なのに、昼間はぽかぽか暖かかったのに。
野球部の練習が終わるのを待ってたら、辺りは真っ暗。そして凄く寒い。
まだまだ秋の気分だったあたしは防寒具なんて持ってきてなくって、あまりの寒さに身震いをした。
寒い、って武に言ったら「うーん」って言って少し考えてからあたしにブレザーを脱いで貸してくれようとした。
別にあたしはそんなつもりで寒いって言ったんじゃあないから慌てて遠慮した
(確かに着たいといえばそうなんだけど武に風邪引かれちゃ困るからね!) 遠慮したはいいけどやっぱり寒い。
あたし程じゃないにしても、武だってきっと寒いと思う(あたしはスカートで武はズボンだからその分だけね)
お互い寒くならない方法をぼんやり考えてたら良いこと思いついちゃったよウフフ。
まあ、ちょっと否結構恥ずかしいけどあんまり人通りも無い道なので、遠慮なく。
武の左腕にあたしの右腕を巻き付ける様にして武に引っ付いた。武の腕ってすき。
そんな体勢で少し歩いた後、武が笑いながら「そんなにくっついて歩きにくくねぇの?」
って訊いてきたから仕方なく離れざるを得なかったけど。ぶー。
ほどいた腕はなんだか寂しくて、ぶらぶら振りながら歩いていると、武に無言で手をぎゅっ、て握られた。
俗に云う恋人繋ぎ、って奴で。あたしの手も武の手も、どっちも同じぐらい冷たくって、
繋いでもお互い温まらないんじゃないかと思うぐらいに冷えていた。でもなんだか嬉しくって、
実際は全然変わって無くても、繋いだ右手から一気にあったかくなった様な気がする。にっこり笑って武を見上げると、
耳が真っ赤だった。それは寒さの所為ですか?そこんとこ如何なんでしょう山本くん?
その手
を
絡めて、
(それだけでホラ、あたしはこんなに幸せ)
333 祐ちゃんに捧ぐ!(名前変換無くてごめんね) 杠葉(061106)