「あの…」
「何?」
「先輩“セクハラ”って知ってます?」
「知っとうよ。“セクシャルハラスメント”じゃろ?」


…誰かこの人とめて下さい。




蝶よ、花よ、





此処は仁王先輩の部屋。彼氏の部屋で二人っきり、なんて言ったらちょっとアレな事とか起こってそうだけど、断じてそんな事は無い。 今やってる事は至って健全だ。ただ、その、体勢に少々問題があるだけであって、


「あの、先輩。ダーツを楽しむんじゃなかったんですか」
「そうだったのう」
「何でこんな状態なんですかね」
「何でかのう?」


うぜえええ!この人絶対楽しんでるよ。一々発言する度に低めの声で耳に口を寄せて囁いてくるのですからね! その所為であたしが毎度毎度反応する度に ククッ ってわらったのが聴こえてくるのだから。


「ダーツって個人技でしたよね?間違いなく二人がかりで投げるモンではなかったですよね?」
「でもお前さんには一人で投げさせんよ」
「な…」


んで、と言おうとするも、直ぐに言葉が続く。


一人に投げさせた結果がアレじゃろ?俺の部屋を穴だらけにされたら俺が困る」
「……スイマセンデシタ」


アレ、と言って指したのはダーツの的から30cm程左にあるカレンダー。あたしが放った第一投目がど真ん中に刺さっている。
うん、確かにそうだな。なんて納得しかけたけど、いやいやいや。腰に手を回してやる必要は無いでしょうよ。 流されちゃ駄目だあたし!言う時にゃ言わにゃならんのだ、と思って グイっと後ろを向いた。



「…っ」


なっ、ななな何してるんですかこの人ォ!勢いよく振り返ると、そこには都合よく仁王先輩の顔があって、それで私は、


「くっ…いつになってもはキスにも慣れんの」
「…! にっ、おうせんぱいが慣れ過ぎなんですっ」


どうしていっつもいっつも彼は余裕しゃくしゃくで私ばっかりが焦っているんだ。ああ恥ずかしい。 あまりの恥ずかしさに顔を手で覆った。ぼそり、照れ隠しに呟く。


「…仁王先輩のばか」
「それは聞き捨てならんの」
「…!(えっ今の聞こえてた!?)」
「…じゃあ、」


なんかこう、低くて艶のあるような声で言う。普段から聞いてるこっちが困る様な声出してるんだけど、 更にそれに磨きがかかった、みたいな。兎に角破廉恥な声だったのです!


「その馬鹿を好きなのはどこのどいつだったかのう」
「・・・。わ、私、です…」
「ん、」


くしゃり。頭を掴むようにして撫でられた。顔を覆っていた手を外すと、目の前には「よおできました」 にっこり笑った彼のカオがあった。



やば、今ちょっとときめいた、かも。


(ああなんて心臓に悪い・・・)






350hit.弥空 さまに捧ぐ!  仁王先輩むずかし…。  樋山(070402)