今日は天気がいい。
最近は全く持って授業に集中できない。学生の仕事を怠ることへの罪悪感が無いわけではないが、それ以上に精神的にキている気が、した。
こんな事をエスケープして屋上でぼんやりしている理由にしたらきっと担任に殴られるんだろうなあ、
私のぼんやりとした思考と同じテンションで遠くの工業地帯から白い煙がゆるゆるとのぼるのが見える。
どこかのクラスがグラウンドで体育をしているのかにぎやかな声が聞こえてくる。以前は必死にグラウンドを眺めていたなあ。
何時から見なくなったんだっけ。 そうだ、3年生の授業が終わってからだ。もう眺める必要が無くなった、から。
三年生の授業が大分前に終わった、から。
なんで好きになったのかはよく分からない。最初は憧れだったのかなあ、とも思う、今では。なんと言っても有名人だった。
土方先輩は顔がいいんだからやっぱり人気があって(マヨラーな事を含めても)私なんかが好きになるのは恐れ多いひとだったから。
動機は微妙だったにせよ、それがきっかけで気が付けば目で追うようになり、更に気が付けば、本当に、
どうしようもないくらい好きになっていた。
好きになってからは毎日が楽しくて仕方がなかった。
別に話しかけたりなんて事をする訳ではなく、ただ 移動教室のときにすれ違えたらいいな、
みたいな健気な思いを抱いて学校に行っていた。得られるモノは無い変わりに、失うモノも無い。
ある意味凄く気楽で、楽しくて、幸せだった。
もう直ぐ卒業式。もう直ぐどころかもう明日だ。きっと、否確実に先輩は私の存在なんか知ることなく高校生活を終えるのだろう。
そんなの好きになった地点で分かってたのに、覚悟の上で好きになったのに。考えれば考える程淋しくなる。無いものねだりだ。
忘れようと必死になればなる程自分が好きなんだと認識させられる。余計に忘れようとする、また好きだと思う。ループ。
抜け出せない。
この想いもいつかは風化するのだろうか。新しい恋が見つかるのだろうか。
「土方せんぱい、好きです、」
ポツリと漏らした言葉は風に乗っていった。いや、若しかしたらその辺にボトリと落ちたのかもしれない。
とにかくあのヒトに届くことは無かったのだ。
灰色のコンクリートに染みが出来て、一箇所だけ色が濃くなった。これは断じて悲しいからでも、切ないからでもない。
違う、違うんだ。だって初めから分かってたじゃないか、叶う事なんて無いんだと。
煙が目に滲みる