「なあ、にらめっこやろうや」
「…は?」
にらめっこ?何言ってんだ、と訝し気に見ればはやては不満そうにこっちを見ていた。
こういう表情してるとかわいいなあ、なんて断じて思ってねぇ。頬が緩んだのは阿呆だなあ、と思ったからだ。そうに決まってる。
「いま馬鹿にしたやろー!」
「してねぇよ!」
「…ほんま?」
「ほ…ほんま!」
急に勢いよく叫ばれたものだからつられて勢いで言い切ってしまった。自分の発言を反芻しながらはやてを見て、少し後悔をした。
なんでかってのは顔をあげたらはやての奴がやたらにキラッキラした目でこっちを見ていたからだ。何か嫌な予感がしないでもない。
「ほなやろうや!にらめっこ!」
「なんでンなことを、」
「はいっにーらめっこしーましょー」
「アタシはやら、」
「わーらうーとまーけよー」
「だからはや、」
「あっぷっぷーっ」
「…」
人の話しも少しは聞くべきだと思う。ここまで人の話を聞かない人間が職場では管理職だということに驚きだ。いや、仕事はできるんだ。
仕事は。ただすこし、人の話をきちんと聞いてくれないだけなんだ。
じとーっと軽く睨むとはやても同様にこっちを軽く睨んできた。なんでアタシが。被害者はアタシで間違いない気がするのだが。
「なーんでおもろい顔せぇへんのやー」
「だからやるなんて一言も言ってねぇだろ!」
「……やってくれへんの?」
「う……。べ、別にそういうつもりで言ったんじゃないけど、」
ぷいっ、と顔を背けたのに先程まで向いていた方から伸びて来た手によって顔を正面へ戻された。
顔を挟んでいたソレは、アタシが正面を向くと今度は両頬を軽く摘んだ。
「にらめっこはなあ、不機嫌そうな顔してたらアカンのやでー」
「誰が不機嫌な顔だッ」
「そんでなあ、相手の顔見て笑ったら負けなんやでー」
「い…っ、ふっ、へる、ふぁ!」
「ちょっ、なにすんねん、ふへっふぁふぁ、」
「ふぁやへふぉそ、」
「ふぁ!?ふぁにふぉ…」
「ねえはやてちゃん、ヴィータちゃん、なに、してるのかな…?」
「……」
「あああ、なっ、なのは、落ち着いて…!」
「……」
お互いの頬を抓ったままの状態で凍りついた。比喩なんかじゃなく、実際に凍ったのではないかと思う。
なのはの笑みは絶対零度と呼ぶに相応しく、背後にブリザードが見えるようだ。
横であわあわしているフェイトに対して非常に申し訳なくなった。悪ィと心の中でつぶやく。
「いま、勤務時間だよね?なに、してるのかな?」
重ねて問われると更に怖い。なのはからはやてへとゆっくり視線を戻すと、はやては強張った笑みを浮かべていた。
うっすらと目尻に溜まったものは見なかったことにしたい。こちらも必死に目で訴えると、こくり、小さくはやても頷いた。
それを確認するとお互い頬から手を離してそれを床へ持っていく。もちろん、向くのは魔王さまの方。
「「すいませんでした」」
昼下がり、平穏を祝して
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なんかもう…私がすいませんでした(本当にな)
友人に送りつけたものを加筆修正。口調、その他細かいところは全てフィーリング(・・・)
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