「はやて、紅茶が入ったよ」
「……ロッサ、それ30分前にも聴いたわ」



手元の書類をちらりと見、右脇に積み重ねられた未処理な書類の山を見、それから正面の緑髪を見た。 生憎とリィンは急ぎの書類を届けに行ってもらっているお陰で此処にはいない。この部屋に在るのは頭痛の種が二つだけだ。


「はやて、あんまり時間が経つと冷めて美味しくなくなってしまうよ」
「ロッサ…あんたはウチの机にある書類を見てなんか思わへんの?」
「……ケーキと紅茶を置くスペースがないね」
「……」


はぁ。盛大にため息を吐いてこめかみに手を添える。頭痛が酷い。 急ぎの書類が山のようにあるていうのにこの男はそんなにも私の邪魔をしたいのだろうか。 邪魔くさいのはおまえの長髪だけで十分だ、と思いつつ再度ロッサを睨む。


「気持ちは有り難いんやけど、今日締め切りのがまだまだ沢山あるんよ、だから、」
「はやて。前にご飯食べたのはいつ?前に寝たのはいつだい?」
「え…」
「僕が間違ってなければ君は昨日寝てないし、食事も10時間近く摂ってない筈だけど」
「それは、」

提出の期限が迫っているんだから。遅れたらみんなに迷惑が、かかる。 仕方のない事なんだから、言い返そうと口を開くも、先に話し出したのはあちらの方だった。


「デスクワークが大変なのもわかるけど、ほどほどにしたまえよ」
「そんなの…仕方ないやん」
「君の本職は?体が資本なんじゃないのかい?」
「…!」
「君の部下達も随分と心配していたよ。部下に心配をかけるのは、あまりよくない」
「……うん」


わかればいい。俯いた私の上から声が降ってくると同時にぐしゃりと頭を撫でられた。 驚いて顔をあげれば、普段見ないような笑顔が斜め上にあった。


「紅茶とミルフィーユここに置いていくから」
「…うん」
「食べてくれよ?自信作なんだ、ミルフィーユ」
「…うん、ありがと」


彼が出て行った直後にミルフィーユを手に取る。甘い。というか凄く美味しい。


「もう…どっちが女だかわからんなあ」


くつりと笑って呟くと再び書類と向き合った。早いところ終わらせて、お礼に行かないと。 今度差し入れにクッキーでも焼いていってあげよう。
ティーカップに手を伸ばしならがらぼんやり考えた。





カラマラキア・ティガニタ





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初のまかぷ。査察官が(中の人が原因で)かっこいいキャラに見えません。
SSでのやりとりをきいて、悶えたものでして←